昨年秋にソニーミュージック主催の「ソニアカ」で講義させてもらった時にこんな質問が出ました。
「母音分割は『-』ハイフンを使っちゃダメなんですか?」
この質問に自分は確か、
「ハイフンは分割前の言葉の母音の音を引き継ぐので、母音分割にならない」
と述べながら、自信がないのでゲストでいらっしゃってたクリプトン社のwatさんに回答を振らせてもらいました。(^^;)
調声において、母音を次のノートにつなげる場合、ハイフンを使うか母音を打つかは、初心者の方には違いがわからないかも知れません。
で今回、自分の勉強も兼ねた検証も含め、その事について書きたいと思います。
ハイフンを使うのと母音を打つ事の違い
まずは、自分で打ち込んで違いを聴いてみるのが早いです。G3くらいの音域でこんな風に「あ」の音を打ち込んでみましょう。(※ 使用したのは初音ミク V3です)
で、プレイバックしてみると、特に母音の声質は変化してないと思います。「ハイフンは分割前の言葉の母音の音を引き継ぐ」というのは間違ってないかと。
次にこのハイフンの部分を母音「a」に変えてみます。
これで聴いてみると、分割した地点から母音の声質が変わったと思います。これが母音分割です。
母音分割は、分割後に前の母音とは別のサンプルが鳴ることで、母音部分の声質を変えることができます。
あと通常、母音分割は「子音+母音」で母音部分を分割する事が多いですが、この例のように「a」の母音単独の音でも分割できるのです。
・・・とまぁ、ここまではよく知られている事なのですが、次は自分の勉強も兼ねた検証です。
では、後続の母音が分割前の音と音程が違う場合、どのように再生されるのでしょうか?
テストとして、C4の「a」からC3の「-」(ハイフン)に移行する場合を聴いてみます。こんな感じで打ち込みました。これだけ音程が離れていれば違いがわかるでしょう。
で、プレイバック。聴いてみるとハイフンのC3の声質が荒っぽいですね・・・。
ではハイフンを母音「a」にしてみましょう。
これで鳴らしてみると、C3の「a」はとてもスッキリした声で自然な感じです。
ということで、この2つを聴き比べた印象でまとめると、
ハイフンを使った場合、音程が離れていても、前の母音のサンプルをそのままシフトして鳴らす仕組みになっている
と思われます。あくまで音を聴いた感じでの自分の推測なのでご注意を。
これを考えると音程が大きく変わる場合、ハイフンは使わない方が良いと思います。声質が変わってしまうので。なので自分の調声でもハイフンを使わず、母音を打つ事の方が多いです。
けど、ハイフンを使う事もあります。それは個人の声の好みの問題でもあるのですが、例えばG3の「な」の音などは母音分割せずにハイフンを使った方が抜けの良い声だったりします(初音ミクV3の場合)
この辺の母音分割する/しないは、音域や言葉によって違ってくるので、使い込んで声の傾向を把握しておくと良いと思います。制作に時間があれば、ハイフンを使った場合との違いも聴き比べてみるとベストです。
【著者:Mitchie M @_MitchieM】
コメント
結局マニュアルよりも経験則、それに個人の好みとアイディアなんですよねぇ。
苦労して研究して身に着けたものは、決して無駄にはならないですよね。
こういうことを記事に書くMitchieさんって、ほんとすごいお方だなって思います。
尊敬します^^
どうもです。一度気になると検証してみないと気が済まないのですよね。(^^;)
お疲れ様です
自分は必要以上に母音分割を活用しますが
(結構楽しい)ハイフンの活用の事は
しばらく頭から外れてました…
しっかし色々な手法があって奥深いですね
それを使いこなすMitchie Mさんは
職人ですね!
VOCALOIDの打ち込みは奥が深いですよね。色々と発見があって面白いです。^^